会話のみのものや短いものを置いておく場所です。
CPはほぼ快新。別CPの場合は注意書きがあります。
5、4、3…
声には出さず、時計の針をじっとみつめてこっそりとカウントしていた。
2、1…
「ゼロ」
そっと呟いた台詞と共に授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。
「はい。じゃあ今日はこれで終わり~」
教壇に立つ先生がのんびりと授業の終わりを告げ、さっさと教室から出て行った。
「新一!」
立ち上がり、ガバッと目の前に座る男めがけて背後から抱きつこうとした男を俺は冷めた視線で見遣った。
「うるさい」
抱きつかれそうになっている男はひょいっと背後も見ずに体をずらすとそのまま足を振り上げて背後の男を狙っていた。
いつもと何も変わらない風景をみて俺は深く溜息をついた。全く、飽きもせずよくやるもんだ。
ニコニコと攻撃されたのにもかかわらず、さらっとその攻撃を受け流している男…黒羽快斗と、不機嫌そうに眉間に皺をよせる男…工藤新一はこの学校でかなりの有名人だ。いや、この学校だけではなかったりするのだが、そんなことはもうどうでもいい。
親戚でもないらしいこの二人はやたらとよく似た容姿をした上に実は性格もよく似ていたりする。負けず嫌いなところとか。
こいつらの隣の席に座る俺としては目立つ上に騒がしい且つ、他人の目を惹きつける容姿をしているため熱い視線が一緒にいるだけで2乗も3乗もするこいつらは鬱陶しいことこの上ない。
まぁ、別にこいつらが嫌いなわけではないが、誰もが羨むこの席で日々を過ごしてみればこの苦労はきっとわかる。
「新一、屋上行こうぜ?」
「……おう」
拗ねたように顔を背けてはいるが、黒羽の言葉に素直に頷く工藤。そんな工藤を見てニヤニヤ顔が隠し切れていない黒羽。そしてその光景をみて様々な意味を含めた溜息が聞こえてくる。
……どこのバカップルだ。
俺は再び深く溜息をついた。
工藤は黒羽をただの友達としてしか見ていないらしい。そりゃそうだ。
しかし、黒羽の方は違う。しっかり工藤を狙っている。むしろ工藤がそれに気づいていないのがおかしい。
それでも餌付けやその他諸々の成果か、工藤もしっかり黒羽に懐いていたりするのだ。本人は全く自覚していないが。
おかげで俺は傍から見たらただのバカップル…黒羽と工藤を嫌でも毎日見る羽目になるのだ。
「何ボサっとしてんだよ、さっさと飯食おうぜ~」
「……おう」
友人の声に答えるとふっと小さく笑った。
まぁ、なんだかんだで悪い奴らじゃないし。嫌いではないのだ。
それに、ひょっとしたら今日はもう教室に戻ってこないかもしれない。
暖かそうな空の下で二人して寝ている姿が目に浮かんだ。
* * *
第三者からみた2人。パート2。
同級生な2人の同級生です。席は快斗の隣の席。つまり一番後ろの席、窓側から二番目の席。そんなイメージで書いてました。
2人の隣で過ごすのは大変そうだなーっと思ったので。目の保養にはなりそうですけどねv
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「とりっく おあ とりーと!」
可愛らしい声が頭から降ってきた。いや、実際には機嫌の悪そうな声だったのだが。
「お久しぶりですね。名探偵」
にやりと笑って見上げると不機嫌そうな顔をした子供…今は魔法使いのような格好をしているが、紛れもない名探偵が座っていた。
「それにしても、ずいぶんと可愛らしい格好をなさってますね」
「るせ」
腕を伸ばしてにっこりと笑うともの凄く嫌そうな顔をされた。それでも自分が今座っている場所の高さを考えてか、そのまま腕に飛び込んできた。
「珍しいですね」
貴方が素直に降りてくるなんて。
「……で、どっちなんだよ」
お菓子かいたずら。
「そうですねぇ…」
お菓子は持っていない。さっきの現場ですべてばら撒いてしまったから。
さて、どうするかな…。
目の前でにやりと笑う姿は魔法使いの衣装よりも黒い尻尾の方が似合う。
ひょっとするとキッドがすべてをばら撒いてしまったと読んだのかもしれない。確信犯か?
「…では 、treatにしましょうか」
名探偵の目が僅かに大きくなった。
「へぇ?で、何をくれるんだ?」
甘いお菓子は持っていない、それならば…。
ちゅ
軽い音を立てて目の前の形のいい唇に口づけた。
「なっ…!?」
お。驚いた顔も可愛いいなー。
「甘いでしょう?」
お菓子は持っていない、それならば甘い口づけを…。
真っ赤な名探偵の頬にもう一度口づけを落としてにやりと笑った。
「ご所望ならば、今夜はずっとこうしていても構いませんよ?」
むしろ離すことはできない。
「ッ…もういい。好きにしろ」
フイッと顔を背けた名探偵に少しだけ驚いた。本当に、今日はどうしたというのだろう?
「……いつになく、素直ですね」
「別に」
そっけない。
「……そういえば、この衣装はどうされたんですか?」
「うっ…」
あからさまに目をそらした。
「…………この衣装に原因が?」
「原因ってなんだ、原因って」
「…隣の彼女が関係してたり?」
びくっと肩が揺れた。図星か。
「何か弱みでも握られたんですか?」
「そういうわけじゃ…ただ…」
「ただ?」
「なんつーか…罰ゲームみたいな?」
「……………どういうことですかそれは?」
「お前…顔怖いぞ」
「気のせいでしょう」
で、何の罰ゲームで罰ゲームでどうしてこんなことになるのか、是非教えてほしいものですね?
「俺がちょっとあいつの約束破っちまって…それでこの服着てお前のところ行ってこいって…」
「ふぅん…」
なるほど、そういうことか…。
「キッド?」
不思議そうな顔をした名探偵の額に唇を落としてギュッと抱きしめた。
「な、な…」
わたわたと暴れる体を無理やり抑えて、そのまま屋上から飛び降りた。
「キッド!」
「私の隠れ家に行くだけですよ」
「はぁ?」
「どうやら、私の方がお菓子をもらったようですね」
彼女から
「どういうことだよ!」
「まぁ、彼女からいたずらされるというのもまた何されるかわかったもんじゃないですからね」
私は貴方という甘いお菓子を、私は貴方に甘いキスを…
Trick or Treat?
甘い夜を貴方に……
「ふぅん…キッドキラーね」
教室で堂々と新聞を広げる黒羽快斗は少し眉間に皺をよせて呟いた。
正直、不愉快だ。
別に、彼がキッドキラーであるといわれることは特に気にしていない。彼は自分にとって特別な存在で、ライバルといえる人なのだから。
しかし、たとえ幼い体だと言っても、大衆の目に晒されてはこちらも気が気でない。
「こんな堂々と姿見せちゃっていいのかね」
ただでさえ、名探偵として有名な彼は日本中にファンがいる。幼い姿の今でさえあの容姿だ。これを機に目を付ける輩もいるかもしれない。いや、絶対いるはずだ。
――…本当は誰の目にも触れさせたくないのに…
今すぐにでも閉じ込めてしまいたいぐらいだ。そんなこと叶うはずはないけれど。
深くため息を吐くと、不機嫌さを隠すことなく新聞を閉じて窓の外を見た。
「…絶対に手に入れてやる」
そして二度と放さない。
怪盗キッドに盗めないものはないのだから……。
群衆を誘導する声のあと、黒羽快斗…怪盗キッドは満足気に周囲を見渡した。
人が中に入ってしまえば、あとは開催の声をあげるだけ…。
だが、その前に一つだけすることがあったのだ。
「お。見っけ」
視線の先には人ごみに埋もれる小さな頭。
どうやら保護者とも逸れ、必死に人の波に飲まれようとしているようだ。
「……仕方ねぇな」
言葉とは裏腹に口元にはしっかりと笑みを湛えている。
本当は、盗聴器をつけるだけでよかったのだが……。
グッと帽子を深くかぶり、愛用のトランプ銃を背中に隠した。
昨夜の仕返しに…。彼はそう思うかもしれない。それでもいい。
どちらにせよ、本心を知られるのも癪だし、誰よりも油断できない彼を挑発しておくのも手かもしれない。
それでも、彼がいるだけでこの舞台は最高のものになる。
「助けてあげるとしますか」
挑発の言葉と盗聴器を残して…。
さぁ、ショーの始まりだぜ!!
「またな。名探偵♪」
にやりと笑ってシルクハットの鍔を引き下げた。
「待て!キッド!!」
ふわりと体を宙に投げ出してコナンの驚いた顔を眺める。
小さな手が空を掴み、白い衣装を身に纏った怪盗はそのまま重力に逆らうことなく落ちる。
バッと白い翼を広げ、ビルの谷間を抜けて飛び去ってそのまま姿を消した。
「くそっ…!」
空を掴んだ手をそのままぎゅっと握りしめて月を睨みつけた。
コナンが小さな手を握りしめている間、少し離れた場所でキッドも同じく月を見上げていた。
「「今度こそ、捕まえてやるからな」」
探偵はその仕事を全うするために。
怪盗は己の想いを叶えるために。
…………捕まるのはどっち?
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