会話のみのものや短いものを置いておく場所です。
CPはほぼ快新。別CPの場合は注意書きがあります。
「なんで黒羽がここにおるんや!」
「僕に会いに来てくれたのですか?そんな…心配しなくても僕の心は君に…」
「だー!うるせぇ!!新一がいなかったら俺だってこんなとこにいねぇよ!」
イライラと時計にちらりと視線を向けた。もうそろそろ新一が来るころだろう。
未だに隣でギャーギャーと騒ぎ続ける二人はシカトして目だけで新一の姿を探した。
「新一!」
息を切らして走ってくる新一の姿を見つけて思わず叫んだ。何人かが奇異の目で見たような気がするがそんなことは気にしない。
「わりぃ。待ったか?」
よほど急いで来たのだろう。肩で息をしている。
「大丈夫だよ。俺も来たばっかだし」
まるで恋人同士の待ち合わせのようだ。ま、いつか本物の恋人になってみせるけど。
「ちょお!なんやこの雰囲気!!ワイらのこと忘れとらんやろうな!」
うがー!と俺と新一の間に入ってきやがった黒い顔を睨みつけた。
…いいとこだったのに…邪魔しやがって。
「遅刻しておいて黒羽くんに近づくなんて…!」
「おめぇは黙ってろ白ばか」
キッと睨みつけると少し大人しくなった。
「で?どこ行くんだ?」
「んー……。映画…とか?」
「そうだなー…特に目的ないならそれが無難かな」
「勝手に決め…」
「んだよ。文句あんのか?」
イラッとしたのか不機嫌そうに新一が服部を睨みつける。
「べ…別に文句はあらへん」
その迫力に押されたのかすごすごと引き下がった。いい気味だ。
「行こうぜ?快斗」
「そだな」
二人連れだって歩くとその後ろから慌ててお邪魔虫2人が付いてくる。
はっきり言ってものすごくうざい。
折角新一とデートできるのに。
「さっさと捲いてどっか行こうぜ?」
俺だけに聞き取れるほどの小さな声。口元は楽しそうににやりと笑っている。
「OK。お姫様との逃避行も楽しそうだな」
「誰が姫だ」
「そりゃ新一は俺にとっての姫だし?」
「…言ってろ。バ快斗」
「酷いなー」
くすくすと笑みが零れる。やっぱり邪魔がいても新一がいるだけで楽しいのだ。
できることならもっと違った関係になればいいのだけれど…。
「あいつら捲けたらデートに付き合ってもらうからな?新一」
「わーってるよ」
「そういえば。なんでまた奴らと出かける気になったんだ?」
「………」
新一の視線が彷徨う。何度か口を開いては閉じている。
「あー…」
「?」
「忘れた」
「…………ひょっとしなくても説明すんのがめんどくさくなっただけだろ」
「バレたか」
悪びれもしなくしれっと言う新一にこれ見よがしにため息を吐いてやった。
「ま、どうでもいいけどね」
――…新一と一緒にいられるだけで満足なんだけどさ…
新一と取られるかもしれないという焦りは拭えない。結局俺も余裕がないのだ。
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気づいたら傍にいて、気づいたら誰よりも大切な存在になっていた。
「なぁ、快斗」
どこに行っていたのか、席を外していた新一が戻ってきたようだ。10分しかない短い休み時間はいつも自分の席にいる新一が珍しい。
幼馴染に言わせれば、快斗が新一の傍から離れる方が珍しいと言うのだろうが。
「んー?」
することもなくて暇つぶしに暗号でも考えていたところだったので笑顔で答える。
「あのさ…」
少し視線を迷わせて言葉に詰まっている。珍しい。
心なしか頬が赤い気がする。
…………まさか…ね。
「どうしたんだよ?」
一瞬頭をよぎった考えを追いやってポーカーフェイスを取り繕う。いつもならすぐに気づく新一も今日は気付かないようだ。
「ちょっと頼みたいことがあるんだけど…」
そう言った直後、授業の始りを告げるチャイムが鳴り響いた。
「悪ぃ、また後でな」
「ちょ…新一?」
慌てて席に座るのとほぼ同時に担任が入ってきた。
小声で話せば大丈夫だろうが、新一が嫌がるだろう。なんだかんだで真面目なのだ。
「後で絶対話せよ」
小さく告げると新一の首が微かに頷いたように見えた。
****
「で?頼みたいことって?」
昼休み。
いつもの特等席である屋上にあがった俺達はフェンスに凭れて購買で買ったパンを食べていた。
「んー…正直、頼みたくないつーか…でもお前しかいないんだよなー…」
「いいからさっさと言え」
ピシッと額に指を突き立てると困ったような顔をしていた新一がむっと眉間に皺を寄せた。
「わーってるよ。くそ、なんで俺がこんな目に……お前今週の日曜日暇か?」
嫌そうに眉間に皺を寄せたまま睨みつけてくる。
つーか日曜日?
「暇だけど…って何?デート?」
にやりと笑って聞き返すと少しだけ新一の顔が変わった。
「まぁ…外れではないかもな」
「え?マジ?」
漸く俺の努力が実を結んだ…ってわけでもなさそうだな。嫌な予感がする。
「正確に言うとWデートって言うのか?」
「……………それは誰と誰が誰となのかお聞きしてもよろしいでしょうか。新一さん」
「そんな顔すんな。俺だって悪いとは思ってるよ。でも俺だけ巻き込まれるのはごめんだ」
そう言って深くため息を吐いた新一は観念したかのように淡々と話し始めた。
「隣のクラスに服部と白馬がいるだろ?」
「あぁ、あの二人ね」
よく新一の前に姿を表してはライバル宣言だかをして立ち去っていくあの二人。新一のライバルは俺だけなのに。と嫉妬していたことは記憶に新しい。
「その二人がなに?」
「お前、本当にあいつら好きじゃないんだな」
「当たり前でしょ?俺から新一取ろうとしたんだし」
「俺はお前のものなのか。まぁ、いいや、奴ら…というより服部の方だな。日曜日に一緒に出掛けようって…」
「はぁ?」
一瞬頭が真っ白になった。
冗談じゃない。奴なんかに新一を渡してたまるか!
「もちろん断ったよな!?」
「断ってたらこんな話してねぇって。ま、断ろうとはしたんだけどなー…」
「無理やり押し切られたと?」
「そゆこと。白馬と寄ってたかって……しつこいんだよ。あいつら
「……くそ…なんでその時俺を呼ばなかったんだよ」
「時間なかったんだよ。あーもう、で?お前は来るのか来ないのか?」
「行くに決まってんだろ!新一一人で行かせるわけにはいかないだろ!?」
新一とどっか行くなら二人っきりがいい。なんであいつらがいるんだよ。
「もし俺が行かなかったらどうしてたんだ?」
「他の奴誘ってたよ。でも、俺は快斗と居たかったから……」
「しんい…」
「お前なら上手くあいつらを撒けるだろ?」
そうだよな。新一が俺の気持ちに気づいてるわけないよな。
少しだけ淡い期待を持ってみた自分が悲しい。
「適当なとこで逃げようぜ」
「おう」
ま、余計なやつらがついてくるけど新一と一緒にいられることには変わりない。
ついでにあいつらに牽制するいい機会かもしれねぇな。
少し前向きに考えてぼんやりと日曜日のことに思いをはせた。
――…絶対に、誰にも譲らない。新一は俺のものだから……
「はじめまして。俺は黒羽っていうんだ」
「俺は…」
「工藤新一クンでしょ?」
「え?なんで…」
「だって有名だし。自覚ない?名探偵」
ニコニコと目の前で笑う男に一瞬だけデジャビュを感じた。
「前…どこかで会ったことあるか?」
「……さぁ、どうだろうね」
相変わらず笑みを浮かべているが、その笑みが少しだけ何かを含んだようなものになった。
それは誰かを思い起こさせる笑みで……。でも俺はどうしても思い出せなかった。
――…こいつは一体何者なんだ……?
普通なのに普通じゃない。俺は確かにこいつとどこかで出会ったことがあるのだ。
ただ、今はそれを思い出せないだけで……。
「綺麗…だな」
「そうですね」
「それでもこれはお前の探しているものじゃないんだろう?」
「ええ…中々見つからないものですね」
「ビックジュエルってのも意外と多いもんだな」
「ですね。まぁ、そう簡単に見つかるなんて思ってはいませんでしたけど」
「もし、見つけたらどうするつもりなんだ?」
「誰ももう二度と永遠なんて幻想を抱かないように壊してやります」
「組織もな」
「ええ。名探偵に手伝ってもらっているのですからね」
「ま、精々捕まらないようにすることだな」
「誰におっしゃっているのですか?」
「お前。じゃあな」
「もう行かれるのですか?」
「本」
「そうですか…送って行きましょうか?」
「遠慮しとく」
「残念。では」
「おう」
――…でも、私はすでに捕まっているのですよ?貴方に…
――…それはとても甘い口づけ…
「んー……」
「どうかされましたか?」
「いや…なんか甘いモンもってねぇ?」
「は?」
「なーんか急に食べたくなるんだよなぁ…別に甘いモンが好きなわけじゃねぇけど」
「そうですか…飴ならありますけど?」
「マジ?何がある?」
「えっと…レモン、ぶどう、オレンジ、パイナップル…ですね」
「じゃあ俺ぶどう」
「はい」
「さんきゅ」
「ぶどう好きなんですか?」
「まぁな。レモンも好きだけど。でも酸っぱいんだよなー」
「では私はレモンにしましょうか」
「美味い?」
「舐めてみます?」
「遠慮しとく」
「それは残念」
「ばーか」
「ぶどうは美味しいですか?」
「んー…甘い」
「そりゃそうでしょう」
「美味いぜ?でもお前にはやらない」
「まだそこまで言ってません」
「ま、代わりに今度飴でもなんでも持ってきてやるよ」
「あ、それならチョコがいいです」
「なんで?」
「今度の仕事は2月14日なんですよ」
「バレンタインってか?お前のことだから沢山貰いそうだな」
「いえ、私は誰からも頂きませんよ。名探偵以外の人に貰っても意味がないですから」
「…どういう意味だ?」
「そのままの意味ですよ」
「ふぅん…」
「ふぅんってそれだけですか?」
「お前もモノ好きだな。まぁいいや。俺が14日に来れたらやるよ。チョコ」
「本当ですか?」
「俺に二言はねぇ。ま、来れたらの話だけどな?」
「その時は私が名探偵の家に伺います」
「来るな」
「行きます」
「……勝手にしろ」
「ありがとうございます」
「ん…そろそろ行くかー…」
「おや、もうこんな時間ですか…もっと名探偵と居たかったですね」
「言ってろ。俺は帰る」
「はい。ではまた」
「おう。じゃあな」
「あ、名探偵」
「あ?っ…んんっ…」
「ん……やっぱり甘いですね」
「……お前は酸っぱいけどな」
「そうですか?もっと味わってみます?」
「調子に乗んな」
「ハハ。ではまたお会いしましょう?」
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