会話のみのものや短いものを置いておく場所です。
CPはほぼ快新。別CPの場合は注意書きがあります。
昔の夢を見た。
忘れかけていた、遠い日の思い出。
「かいと…快斗?」
太陽が傾いて気づいたら公園にいたのは自分だけだった。
一緒にいたはずの少年を探して辺りを見渡すがその姿はない。
「帰った…のかな」
唐突に襲いかかる孤独感に首を振って気付かないフリをして、思わず溢れそうになった涙を拭いた。
「俺も、帰ろ…」
誰に聞かせるわけでもないが、自分自身に言い聞かせるように一人、歩きだした。
忙しい親に見送られて、二人で遊びに来ていた公園。いつの間にか同じぐらいの年の子と一緒になって遊び始めていた。
楽しかった時間はもう終わり、一緒にいたはずの少年も姿を消していた。
「帰るなら、言ってくれればいいのに…」
誰もいないのなら、少しくらい泣いてもいいかな…と弱い心が囁くが、意地で抑える。
ザワッと少し強い風が背中を押す様に吹きつけた。同時に舞う砂煙に思わず目を閉じた。
「新一」
「え?」
ぎゅっと後ろからのぬくもりに目を瞠った。
「酷いよ、先に帰ろうとするなんてさ」
「かいと?…どこに…」
「ねぇ、帰る前にちょっと寄っていい?」
どこに?と問いかける間もなく手を引かれていた。繋がれた手が温かい。
「しんいちっ!早く!」
「かいっ…」
まだ来たことのない所へ足を踏み入れて、少し躊躇した。それでも前を走る背中を見て、必死に足を動かす。
自分よりずっと高い木々が行く手を邪魔するが、それらをスルスルと避けていく。
空の色が変わり始めている事に気付いて不安になった。…帰れるのだろうか。
そんな事を考えていると、突然視界が開けた。
「!?」
「すごいだろ?」
小さい丘のような場所。そして目の前にあるのは真っ赤な夕日。
「綺麗…」
呆然とその光景に魅入っていると隣の少年は嬉しそうに笑った。
「この間見つけてさ、どーしても新一に見せたかったんだ」
「かいと…」
一人でいる寂しさを感じていたのが嘘のように心が温かくなるのを感じた。
「さんきゅ…」
その日は日が沈むまで夕日を見て、二人で一緒に家に帰った。
もちろん、帰りが遅いと親に怒られたのだけれども。
幼い日の小さな思い出…。
「よぉ、名探偵」
トンと軽い音を立てて背後に白いモノが舞い降りた。
「お前、人の後ろに立つなよな」
「名探偵がんなとこに立ってんのが悪い。何、月でも見て俺を思ってくれてたとか?」
「んなわけないだろ」
馬鹿かお前は。と一蹴するが、気にした風もなく隣に立った。
「懐かしいな…」
「何が」
「いや?こっちの話」
「……」
俺が本当に気付いていないと思っているのだろうか。
俺があの頃の事を全て忘れたと、本当に思っているのだろうか。
「なぁ、キッド」
「んー?」
昔の事を話せば、こいつはどういう反応をするのだろうか。
いつものポーカーフェイスが剥がれる瞬間を見ることが出来るかもしれない、と俺はキッドに気づかれないように小さく笑った。
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拍手にある幼馴染設定の新一ばーじょん!
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