会話のみのものや短いものを置いておく場所です。
CPはほぼ快新。別CPの場合は注意書きがあります。
「…工藤新一、ね」
そう呟いた視線の先には警察に囲まれた一人の青年、新一の姿があった。
「ま、精々楽しませてくれよな?名探偵」
くす…と笑みを浮かべた。その気配に気づいた新一が振り返った時には既に姿を消していた。
新一は一瞬だけ感じた気配を気にしながらも、説明を続けた。
「…ですから、彼はこの場所から現れる可能性が高いかと…」
一応そう助言はしてみるが、相手は中森警部。以前のことがあるからか、あまりいい顔はしていないが、館長からの頼みでは聞かないわけにはいかないのだろう。
尤も、新一自身もこの現場に参加したかったわけではない。確かに、謎を解くのは好きだし、わくわくする。それがアイツ相手ならなおさらだ。
でも、今日は体調があまりよくない。こんな日に無理をするとまた隣に住む少女に何を言われるかわからないからだ。
「では、僕はこれで失礼します」
「工藤君は警備には参加しないのかい?」
「はい。僕がここにいては迷惑をお掛けするでしょうから」
それに、ここにいても体調が悪くなるだけだ。
にっこりと笑みを浮かべて現場から立ち去った。
その姿を見送りながら、ニヤリと笑った人物がいたことに気付くことなく。
少し重たい扉を力をこめて開け放った。瞬間冷たく心地よい風がふわりと新一の頬を撫でる。
人の気配がないことを確認すると新一は深く息を吐いた。
「ったく…こんな日に呼び出すなよな…」
ぼんやりと空を見上げてしばらくすると下から騒ぎの声が聞こえてきた。
「お。始まったのか」
現場からここまで距離はあるのに、中森警部の声だけはやたらと鮮明に聞こえてくる。
「……盗みだして、隙のあった窓から逃げ出すが、それはダミー。本物はその騒ぎに紛れて現場から抜け出すってか?変わり映えしねーヤツ」
「失礼な」
不機嫌そうな声に笑みを湛えて振り返ってやると予想通りの姿。
「久しぶりだな?怪盗キッド」
「よぉ、名探偵。その姿では初めまして、だろ?」
不敵な笑みで悠然と立つ姿は以前と何も変わらない。
ただ、それを見る自分自身の目線が変わっただけ。
「それより、なんで俺のshowの途中で抜けるんだよ」
ポーカーフェイスが崩れ、不機嫌そうな顔を隠そうともしない。
「…中森警部いるだろ」
「前はお構いなしに追ってきたクセに。優しい俺を出し抜いてでもなっ」
「何の話だか」
しれっと目を逸らすと、キッドが顔を少し引き攣らせているのに気づいた。
怪盗のクセに、ポーカーフェイスはどうした。
「…それで?本当の理由はなんだよ」
気を取り直して僅かに真剣味を帯びた表情で再度問いかけてくる。
その目をみて小さく嘆息した。
「別に、ただちょっと調子悪かっただけだ。気にするほどでもねぇし」
「…副作用じゃねぇだろうな?」
「……ちげーよ。…多分」
「多分って…お前なぁ…」
ふぅ。とあからさまに深く溜息を吐いた。
ちょっとムカッと眉間に皺を寄せると急に強い力で引き寄せられた。
「わっ」
「こんなとこでいきなりちっさくなられても困るんでね。さっさと帰っていただこうか?」
「だったら放せっ」
気づいたらキッドに体を預ける格好となっていて、慌てて体を引き離した。が、すぐに捕まる。
「いいから大人しくしとけって。家まで送ってってやるから。それとも隣のあの女の子のとこの方がいいのか?」
「いや、灰原のところいくと余計な心配かけちまうから……ってそうじゃねぇ!放せよ、キッド!」
「ヤダね。折角名探偵がいると思って気合入れてきたのに勝手に抜けやがった報いだ」
「どんな報いだよ!」
ギャーギャーと騒ぎながら抜け出そうとするが、中々キッドの力は強いらしい。同じような背丈のクセに。
「あんま騒いでっと舌、噛むぜ?」
耳元で囁かれた声に思わず口を閉じると、キッドがクスッと笑ったような気配がした。
ムッとして見上げると同時に、ふわっと体が浮いた。のも束の間、すぐに俺達の体は重力に従って真っ逆さまに落ちていった。
「ッ――!!」
「しっかり捕まってろよ?」
言われるまでもなく、キッドの体にしがみ付くしかなかったのだが、改めて言われるとなんかムカつく。
それより、このまま落ちて大丈夫なのか?
「名探偵!下、見てみろよ」
キッドがそういうのと同時に、バサッという音と共に白い翼が開かれたのが見えた。
恐る恐る下を見てみると、キラキラと輝く街……。
「すげ……」
「だろ?」
ネオンの光で鮮やかに彩られた街は、宝石箱のようで、地上を離れたこの場所でしか見ることのできない景色だ。
こいつはいつもこんな景色を見ているのか…?
「いつもはもうちょっと赤が多いんだけどな?」
考えていたことを見破ったような言葉に眉を顰めるが、そこを突くと面倒なことになりそうなのでやめておいた。
「お前さ、今度の現場には必ず来いよ。今度は中森警部が怖いとか通じねぇからな」
「……泥棒は管轄外だ」
「でも、謎は…好きだろ?」
「………お前は嫌いだけどな」
「俺もお前は嫌いだよ」
――だからこそ、苛めがいがある…
クスクスと笑うキッドに俺は呆れて深く溜息を吐いた。
「性格悪…」
「お前に言われたくはない」
光り輝くネオンも少なくなって、街灯の光が目立つようになった。
「…そんなに俺に捕まりたいのなら、覚悟しておけ」
「名探偵も、俺を捕まえられなかったら、お前がどうなるか…覚悟しておけよ?」
「んなもんお前を捕まえればいいだけの話だ」
「…お手並み拝見、といきますか」
――どちらが先に捕らえるか、手加減はしねぇぜ?名探偵…
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