会話のみのものや短いものを置いておく場所です。
CPはほぼ快新。別CPの場合は注意書きがあります。
起きた時から違和感はあった。それは体を起こした時には確信に変わった。
「痛てぇ…」
体を走る鈍い痛み。
「……筋肉痛…だよな」
紛れもないその痛みは足だけに留まらず、体全身を痛みで包んでいた。
「マジかよ…」
おそらく原因は昨日の体育祭の練習。サッカーをやっていたからなのか、運動能力は人より優れているので自然とリレーなど、体育祭の花形となるような競技に出ることが多い。そして、昨日はその練習だったのだ。
いつもならなんてこともない「走る」ということも運動不足が祟ったこの体では少しばかり無理な運動だったようだ。
「情けねぇ…」
自分の運動不足が原因とはいえ、はっきり言って、痛い。とは言え、このまま再びベットに舞い戻るわけにもいかない。仕方なく体を動かしてみるが、ギシギシと音でもしそうな痛みが走る。
激痛。というわけではないが、鈍い痛みがさらに気持ちまでも落とすのだ。正直動きたくない。
「このままサボっちまうか」
いや、それもできない。出席日数が足りないのにこれ以上休んだら本当に卒業できないかもしれない。
「しゃーねぇよな」
はぁ…と大きく溜息を吐いてのんびりと立ち上がった。
あとで灰原に薬でももらっておこう。と考えながら重たい体を引きずって支度を済ませた。
「っ…」
大したことのない痛みとはいえ、思わず顔を顰めてしまうのは仕方がない。
しかし、今回は気付かれた相手が悪かったようだ。
「新一!?どうしたの?何があった!?」
「うるさい快斗」
なんで俺の後ろに座っているくせに俺が顔を顰めたことに気づいたんだ。こいつは…。
「怪我でもしたんじゃないだろうな?どこを?誰にやられた!?」
「だから、うるせぇっつってんだろ」
そういえば、こいつも昨日リレーの練習してたよな。でもこれだけ元気っつうことはこいつは筋肉痛にはならなかった…と。
「ねぇ!聞いてるの!?新一!」
「うるせー!このバ快斗!」
あぁ、もう。なんでこいつはなんともねぇのに俺だけこんな目に合ってんだよっ。
「教えてくれてもいいじゃん」
むぅ。と拗ねた顔をする快斗をちらり見遣ると大きくため息を吐いた。
「なんでもねぇよ。怪我なんてしてねぇし、誰かにやられたわけでもねぇって」
「じゃあなんでそんなに機嫌悪いんだよ」
「おめぇがうるせぇから」
「酷いっ!愛故なのにっ!」
「あほか」
「で?本当の理由はなにさ」
「だから…」
「俺がうるさいのはわかったって。でも、それが原因じゃねぇんだろ?」
じっと俺の目を見て話す快斗は少し…怒っているように見えた。
「……………………ただの筋肉痛だ。気にすることじゃねぇだろ?」
「?だったらなんでそんなにムキに…あ。ひょっとして昨日の…」
「わかったらもうしゃべんな。くそっ…なんで俺だけが…」
「そりゃ新ちゃんが日頃動かないで本読んでるから…」
「俺だって走る時は走る」
「事件の時はね。あんなに全速力したことないでしょ?大丈夫なの?体」
「灰原に薬貰った」
「そっかそれならいいね。ま、大人しくしてことだね」
俺の頭をポンポンと叩いて楽しそうに笑った。
「なんでそんなに楽しそうなんだよ」
むっとして睨みつけると苦笑いを零した。
「だって、新一が怪我したかもしれないって思ったらさ、俺本当に焦ったんだ。しかも学校でずっと一緒にいるのに気付けなかった自分にイライラして…。俺の新一に怪我させたのは誰だって頭が真っ白になってたからね。ただの筋肉痛でよかった」
快斗の浮かべる笑顔が綺麗で、少しだけ顔が火照った。
……ん?
「ちょっと待て、いつから俺はお前のものになった」
「何言ってんのさ。俺は新一を誰にも渡すつもりはねぇぜ?」
「そーいう話をしてんじゃねぇ!」
「あ。それとも新一は他の男のところに行きたいの!?嫌だからね!ぜってぇ新一を手放したりしねぇから!監禁してでも逃がさねぇからなっ」
「あーもういい」
どーでもよくなってきた。
再び一人で騒ぎ続ける快斗を放っておいて、青い空を見上げた。
相変わらず、体は痛いが、たまにはこんな日もいいかもしれない。
「ちょっと!新一!!」
「だーかーらーうるせぇっつってんだろ!バ快斗!」
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「しーんーいーちv」
「嫌だ」
「まだ何も言ってないじゃん!!」
「どうせまたくだらない事だろ」
「くだらなくない!」
「じゃあなんだよ」
「花火大会行こ?」
「……」
「なんだよその嫌そうな顔」
「嫌だということを顔で表わしているだけだ」
「また~。本当は行きたいんだろ?」
「誰が行くかッ」
「なんでさ。いいじゃん花火。綺麗なんだし」
「綺麗は綺麗でもあんな人の多いところ…第一、暑いだろ!」
「やっぱり…」
「んなところにお前は俺を連れていこうとすんのか?」
「うーん…確かに他の人間が新一を見るのは気にくわないな~」
「……お前なんかずれてないか?」
「んー。じゃあさ」
「な、なんだよ」
「花火、屋根の上でみねぇ?」
「は?」
「だからさ、屋根の上で酒でも飲みながら一緒に見ようぜ。それならいい?」
「まぁ……それなら…」
「よっしゃ。じゃあ決まりな!俺つまみ作ってくるから」
「あぁ」
「なんなら浴衣も着る?」
「それはメンドクサイ」
「言うと思った。ならいいや。花火はもうすぐ始まるからな!酒出しといてくれる?」
「わかった」
パタパタとキッチンへ向かう快斗を見送って小さく苦笑した。
「本当は外に出るのも暑くて嫌なんだけどな…。まぁ快斗と一緒なら…」
そんな暑さも気にならないだろうし。
新一が棚から酒を取り出している時。
「花火の下で見る新一も綺麗だろうな~v」
キッチンでニヤニヤと笑みを浮かべながら手際よく料理を仕上げていく男の姿があったとか。
「うーん…やっぱ曇ってるね」
「まぁ、仕方ねぇな。曇ってりゃな・・・」
「でもさ、一年に一回しか会えないって嫌だよねー」
「織姫と彦星か?」
「うん。俺だったらぜってぇ耐えられない!新一と一日も会えないなんて嫌だ!」
「一日かよ」
「新一はそう思わないの?」
「さぁな」
「…新ちゃーん」
「情けない声出すな。でも…まぁ、お前がいなかったらつまらねぇよな」
「……俺はさびしい」
「キッドも似たようなものだったろ。偶にしか出てこねぇんだし」
「新一もさびしかった?」
「どうだろうな。誰かさんがしつこいぐらいに暗号送りつけてきやがったし?」
「しつこい…。でも…新一がさびしくなかったならそれでいいや。偉い。前の俺!」
「自分を褒めるな」
「んじゃあ新一が褒めてv」
「嫌だ」
「冷たいー」
「ほら、さっさと家入るぞ。こんな所でいつまでもいたら風邪ひくぞ」
「そだね。家に入って温まろうぜ」
「あ。お前星型のゼリー作ってただろ?あれ食いたい」
「うん。じゃ取ってくるからリビングで待っててねー」
「おう」
「いっ…!何しやがる…っ」
「言ったでしょ?アイツらに近寄るなって。もう忘れたの?名探偵」
「お前に指図される覚えはない!」
「……言うこときけないならお仕置きしないとね?」
「なッ…!?」
「言ってもダメなら体で覚えさせてあげるよ」
「やっ…やめ…ろ…!」
「大好きだよ、名探偵……」
――――・・・だから誰にも触らせないで……?俺だけのモノになって…―――――
「なぁ、名探偵」
「んだよ」
「なんで俺を捕まえねぇの?」
「捕まりたいのか?」
「まさか」
そんなはずはない。でも、以前は俺を捕まえるためにあんなに必死になっていた探偵クンがどうして今はこうしてその怪盗と暢気に話ているのだろうか。
俺に興味がなくなったから?
初めから怪盗には興味はなさそうだった。俺に興味を持ったのは暗号があったから?いや、でも俺との頭脳戦はこいつもそれなりに楽しんでいたハズだ。
なら何故?
それに・・・・・。
「キッド?」
自分の考えに没頭していた所為か、名探偵の顔がすぐ近くにあるのに気付かなかった。
「っ!?」
「お、珍しいな。お前がんな顔すんのって」
クスッと笑ってまた離れていく。その腕を掴んで引き寄せた。
「キッド?」
突然の怪盗の行動に驚いたのか、体を強張らせて動かない探偵をそのまま抱きしめた。
「…………」
「おい?」
「……………ああ、そうか…」
「だからなんだよ?」
怪盗の腕から逃れようと必死に体を捩る。それでも怪盗の力に敵うはずもなく、その抵抗は殆ど無意味だ。
更に腕の力を強くして、逃れられないようにする。
暴れる名探偵の顎をクイッと上げ、名探偵の目を見た。綺麗な宝石のような瞳が白い怪盗を映す。目を細めてその瞳を見つめると、食らいつくように唇を奪い取った。
「んっ!?」
蒼い目が大きく見開くのが見えた。その中に自分の姿を見とめて満足するともっと深く口づける。
「んんっ……」
唾液が頬を伝う。そんなことはお構いなしに、満足するまで甘い口づけを堪能してから名探偵を開放した。
「はぁ、はぁ…っ…なにっ…すんだよ!」
怪盗を突き飛ばすと素早く唇を拭う。
怒りで睨みつける瞳がいつもより力を増しているようだ。
「キス?」
「馬鹿かテメェは!んなこと聞いてねぇ!」
「ん?んー・・・・あ、そうそう俺さ、名探偵のことが好きみたい」
「ああそうかよ・・・・・・・・・って、ついに頭までおかしくなったか?」
「いやいや、至って正常だよ。俺さぁ、名探偵が俺に興味なくして結構ショック受けたんだよね。でさ、なんで名探偵が俺に興味をなくしただけなのに俺がイライラしてんだ?って思ったわけ」
「・……俺は別にお前に興味がなくなったとか・・・そんなわけじゃないんだが・・・」
「へ?そうなの?だって名探偵俺を捕まえないじゃん。ライバルとしても見てくれないって事だろう?だったら他に名探偵が俺を見てくれるって言ったらこうするしかないかなーって・・・」
そういって再び素早く唇を奪う。
今度は蹴りを入れられそうなので素早く逃げた。案の定、素晴らしい足技がついさっきまでいた場所を狙って風を切った。
「好きだよ、名探偵」
「っ…!」
「名探偵の目に他の何かが映っているのが嫌だ。どんな感情でもいい、ただ名探偵が俺を見てくれるだけでいい」
そう、それが憎悪でも…。
ライバルとしてすら見てくれないのならこれしかないだろう?
「今日はもう帰るよ。でも、絶対に名探偵を俺のものにしてみせるから」
覚悟しとけよ?
そう言い残すと白い羽を広げて姿を消した。
「……だから、俺はお前に興味がなくなったわけじゃなくて…お前の邪魔をしたくないだけなのに…」
ったく、人の話を最後まで聞けよな。
そう呟く探偵の顔は赤く染まっていた。
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