”好き”だとか”愛してる”とかなんて、陳腐でくだらないものだと思っていた。
だって、そこには「真実」があるかどうかなんて、名探偵ですら分からないハズだから…。
「つまり、俺は今まで誰も”愛した”事なんてない、ってことだな」
笑みを浮かべてそっと彼の頬に触れた。
「あぁ、もちろん。新一だけは別だよ?俺が唯一”愛した”人なんだからさ」
そういって額にかかる髪を指で梳いて唇を落とした。
「何が、”愛してる”だ」
憎々し気に睨みつける瞳ですら愛おしい。
苛烈な瞳の中に映る自分の姿を見つけて、恍惚とした。
でも…
「できれば、新一にも俺を”愛して”欲しいんだけど?」
「ふざけんな」
にべもない応えに思わず苦笑が漏れる。が、素直にされても面白くはない。
「いいけどね、別に。いつか堕ちてくるのを待つだけだから」
いつまでも、いつまでも、ずっと彼がここまで堕ちてくるのを…。
「その前に俺が逃げたらどうするんだよ?」
「ダメだよ、新一」
頬に触れていた手に少し力を入れる。
軽く爪を立てたのを感じたのか、僅かに眉が寄る。
「逃げようとしたら、俺、何するかわからないよ」
甘く、どろどろに溶かして逃げられないようにして、
逃げたらどこであろうと必ず捕まえて、二度と逃げようという気を起こさせない。
絶対に、放さない。
どこにも、逃がしてなんてやらない。
「ね、愛してるよ…新一」
だから、俺のモノになって。
***
掘り出し物です…。
ちょこっとだけ修正してup
曇天の空からしとしとと穏やかに雨が降り注ぐ。
強くはないが、やむことのないであろうそれを恨めしげに見つめていた。
「…新一」
窓辺に座り込み、険しい顔をしながら空を睨みつける姿に、快斗は愛おしさを感じていた。
気配を隠さず背後に周り、そっとその体を抱きしめた。
ぴくりと身じろぎするのを感じたが、それ以上の動きはない。
「いいんだよ、俺は」
「…でも」
幼子を諭すような声に、新一は納得がいかないと振り返った。
「俺は新一がいればいいんだよ」
それだけで十分だ。
そう笑うと、新一は困ったような安心したような顔をした。
6月21日。
今日は快斗の誕生日だった。
この日の為に新一は珍しく警察の要請を事前に断り、二人で出かけられるようにと準備をしていた。
しかし、ここ数日降り止まない雨の所為で交通機関は麻痺し、とても出かけられる状態ではなくなったのだ。
もちろん、折角新一が計画してくれたデートが潰されてしまうのは残念だ。
新一だけでなく、快斗もこの日を楽しみにしていたのだから。
それでも。
「誕生日に新一と一緒にいられて、それだけで俺は幸せだよ」
その気持ちも嘘ではない。
大切な日に、大切な人と一緒にいられる。
少し前まででは考えられなかったこの現実が。
「俺には最高のプレゼントだよ」
幸せそうな快斗の笑顔に、新一もようやく笑みを零した。
「…そうだな」
じゃあ今日はずっと二人だけで過ごそう。
誰にも邪魔されないように。
「ケーキ用意してあるんだろ?」
「あぁ。お前の好きなチョコのヤツな」
甘いものが苦手な新一が快斗の為に用意してくれたケーキと。
「あと、プレゼントも」
「あとで持ってくるよ」
快斗のことを想って選んだプレゼントと。
「…あと、まだ言ってもらってない」
「…?…あぁ、そうだったな」
快斗の大好きな笑顔で。
「誕生日、おめでとう」
ーー…最高の日を…
雨はずっと穏やかに降り続けた。
二人の時間を守るように…。
**
久しぶりに書いたので感覚が掴めず…。
でも間に合った!
誕生日おめでとー!!
『紹介したい人がいるの』
そう言って微笑む幼馴染みを見て小さく胸が痛んだ。
あぁ、ついにこの日が来たのか…と。
それはかつて恋心を持っていた者の嫉妬ではなく、娘を取られた父親のような心境だった。
近過ぎた関係はいつしか淡い恋心を昇華させ、親愛へと変わっていった。
彼女もその変化に気づき、互いに何も告げぬまま俺たちの恋は終っていった。
温かい思い出と僅かの罪悪感を残して。
だから、待ち合わせ場所に現れたこの男を思わず殴りたくなるのは仕方がないだろ?
「よ。新一!久しぶりだな」
長い手足に綺麗な手。色んな方向に跳ねた髪。顔なら若干の違和感はあるものの見覚えはある。
...鏡の中で。
だが、俺はこいつを知らない。 ーー気配なら嫌と言うほど知ってはいるが。
「あれ?新一、黒羽くんと知り合いだったの?」
驚いたような幼馴染みの顔。 それを視界に入れながらも俺はクラクラとする頭を必死に現実に引き止めていた。
...こいつが蘭の彼氏...? まさか...嘘だろ...?
「どうした?新一?」
「変なの。あ、黒羽くん。青子ちゃんは?」
「あぁ、あいつならもうすぐ...」
「あ、おこ...?」
現実からの逃避を謀りながらも耳に入って来た新たな単語に反応した。
「やっと戻って来たわね。なによ、言ったでしょ?紹介したい友達がいるって」
「......友達?」
初耳だ。
...って事はこのイケ好かない気障な怪盗と同じ空気を持つこの男は蘭の彼氏じゃ、ない?
「言ってなかった?まぁいいわよね。私、青子ちゃんのところ先行ってるね」
俺と男を残したまま蘭は走っていった。
「...よ、かった...」
「何、名探偵。蘭ちゃん俺に盗られるとでも思った?」
ほっと息を吐いていると、俺の横に立つ男がニヤニヤと笑みを浮かべていた。
「ちげぇよ。大体、俺と蘭はそんなんじゃねー」
「へぇ?じゃ、マジで狙っちゃおうかなー」
「バーロッ!んな事しやがったら...」
「何?俺の事警察に話す?」
シニカルな笑みを浮かべ、挑発する姿は白い姿の時と変わらないように見える。
「...はぁー...ったく、てめぇはよくそれで今まで捕まらなかったな」
「ま、ここまで気配隠さないのは新一だからだけど」
「はぁ?探偵にワザと正体バラす怪盗がどこにいんだよ。大体『新一』って呼ぶな。馴れ馴れしい」
「いるだろ、ここに。それにケチケチすんな、名前ぐらい」
そう言って軽く目を伏せて冷涼な気配を霧散させた。
そこに居るのは既に唯の一人の青年。
「手馴れてるな」
「まぁね。で、ここに居るのはもう『黒羽快斗』っていう唯の人間。だから快斗って呼んでよ」
軽くウィンクして笑う姿が妙に様になっていてムカつく。
「誰が呼ぶか。バーロ」
「えー酷ぃー。快斗くん傷ついちゃったー」
「気持ち悪い」
本当にこいつがあのキッドか?もう詐欺だろこれは。
*** 削除防止用... 書きかけです(/ _ ; )
『絶対に、この日は空けておいてね!』
何度も念を押されなくてもそのつもりだった。
年を越してから俺達は互いの事情でゆっくりと二人っきりになれる状況ではなかった。
だからこそ、今日だけは…恋人達の日と称される2月の14日だけは快斗の為だけに空けておこうと…そう思っていた。
…なのに。
「お疲れ様、工藤君」
「悪かったね、急に呼び出したりして」
事件が解決してホッとしたのだろう。にこにこと笑みを浮かべている目暮警部と高木刑事に新一も笑顔を向けた。
「いえ、お役に立ててよかったですよ」
今いる場所にふさわしい完璧な笑顔を取り繕い、その場を後にした。
毛の長いふかふかの絨毯を踏みしめて、いかにも高級そうな廊下を新一は一人ゆっくりと歩きだす。
ここは都内の某高級ホテル。このホテルの最上階が今日の現場だった。
所謂遺産相続を巡る対立によって起こった誘拐。幼い子供が巻き込まれ、時間も限られている状況で新一が要請を断る事は出来なかった。
無事子供も保護され、犯人も逮捕された。事件は解決したのだ。
それでも、新一の心が晴れる事はない。
…快斗のやつ、怒ってるだろうな
約束の時間からすでに6時間以上は経っている。いくら今から急いでもすでに快斗はいないだろう。
もうあいつとは一週間以上顔を合わせていない。会いたいのに…。
でも、これでもう愛想を尽かされたのかもしれない。次会う時は別れを告げられるかもな…。
ただ、『せめて14日だけは時間を空けておく』という約束すら果たす事ができなかったのだから。
「何やってんだよ…俺は」
足を止めて、一面に大きく張ったガラスの前に立った。
目の前には鮮やかなネオンがキラキラと輝いている。この中に快斗もいるのだろうか。
ガラスの向こうの景色を眺めながら新一は思考の海に潜った。
そもそも、探偵である自分が怪盗と付き合うこと自体が間違っているのだ。
所詮相容れぬ存在。初めから無理だったのだ。
『好きだよ、新一』
そう告げられた時…いや、それよりずっと前から彼に惹かれていたのかもしれない。
だから迷う事無く受け入れた。それが間違いだったのだろうか。
付き合うと言っても表面上は何も変わらなくて、ただお互いへの想いを隠す必要がなくなったというだけ。
でも、学生という身分の上探偵と怪盗であれば必然的に二人っきりになれる事など多くはなくて……。
……。やっぱり、別れようか。
恐らく快斗もそれを望んでいるはずだ。こんな、簡単な約束すら守れない…しかも敵対すべき探偵で、同じ性を持つ人間に誰かそこまで固執するだろうか?
そう考えて急に胸が締め付けられるように痛んだ。
”別れる”と、そう考えただけでどうしようもない程苦しくなり、呼吸もままならない。
あぁ、そんなに好きだったんだ。快斗の事。
どこか他人事のように捉える冷静な頭でぼんやりとそう思った。
今更気づいても仕方ない。これ以上苦しくなる前に別れた方がいいのだ。今から電話してその事を伝えようか?
内ポケットに入れたまま、電源すら入れていない携帯に手を伸ばそうとして…出来なかった。
腕が鉛のように重く感じられ、思うように持ち上がらない。中途半端に上がった腕をそのままに、目の前のガラスに触れた。
ひやりとした冷たい温度が掌を伝って全身に広がるようだ。
「…か、いと…」
「呼んだ?新一」
力強い腕がふわりと新一の体を包み込んだ。
覚えのあるぬくもり、腕、そして声…。
「え…?」
いきなり温かい腕に閉じ込められ新一はさっきまで感じていた胸の痛みを忘れるほどに驚いた。
「快斗?…な、んで…?」
「なんでって…迎えに来たんだよ?事件、解決したんだろ?」
くすくすと耳元で笑う気配がする。柔らかい声に安堵しつつも、じわじわと再び冷たい何かが体を蝕んでいくのを感じた。
「怒って…ねぇの?」
「怒る?何、どっか怪我でもしたの?」
一瞬快斗の雰囲気が剣呑なものになり、抱きしめる腕が強くなった。
「や、怪我はしてない…けど。俺…約束破ったし……」
「あぁ…それね…」
声のトーンが僅かに低くなり、新一はビクッと体を震わせた。
あぁ、やっぱり……。
暫しの沈黙の後、温かいぬくもりから解放され、くるりと体を反転させられた。
必然的に真正面から快斗と顔を合わせる事になり、新一は慌てて目を逸らした。
「………」
「………」
何も言わない快斗に焦れてチラッと視線を上げると、どこか優しげに目を細めて笑っていた。
「怒ってるよ?新一を取っていった警察にね」
「え?」
「誘拐事件だったんだろ?それじゃあ仕方ないよな…でもま、暫く貸してやれないけどな」
そう言って再び新一の体を抱きしめた。
「あ、でも新一にもちょっとは怒ってるからね?」
携帯の電源は事件が解決したらすぐに入れるように。
「新一が中々連絡くれないからホテルの中探すの大変だったんだからな」
「ん……ごめん、快斗」
優しい恋人の背中に腕を回して、新一はそっと息を吐いた。
「早く家に帰ろう?チョコも用意してあるから」
「そうだな」
でも、もう少しだけこのままで…と腕を緩める事なくお互いのぬくもりを感じあっていた。
「で、なんで新一はあんなに不安そうだったの?」
「え?あ、あー…」
久しぶりに恋人に会って、少々…いや、かなり浮かれていた快斗が急に真面目になって問うてきたのはそんな事。
まさか、”快斗に愛想尽かされて別れを告げられるかもしれない”と思っていたなんて言ったら…どんな反応をするのか。
ましてや快斗に告げられるより先に自分から別れを告げようと考えていたなんて…。
「…なんでもない」
ふいっとそっぽ向いて顔を逸らした。快斗ほどポーカーフェイスが得意なわけじゃないから何が元で悟られるかわからないから。
「……新一君?」
「……なんだよ」
じっと見られている。視線の強さで逃れられない事に気付いた。が、正直に話したら反応が怖い。
怒るか、呆れられるか、それを機にやはり別れるという事になるか。
どちらにせよ新一の望むことではない。
「言わないと体に聞くよ?」
「っ…!」
あながち冗談とも取れない声に新一はびくりと体を震わせた。
「……別れる、かと…思ったんだよ」
「…は?」
「俺がこんなんだからお前も呆れて俺と別れるって…そういうと思ってたんだよ」
「なんで?」
「なんでって…」
事件となったら周りが見えなくなって、一緒にいる快斗でさえ目に入らない。
その上事件体質で何かとすぐに巻き込まれるこんな面倒な男を誰が恋人にしたいというのか。
そんな事を言ってみれば何故か快斗は少し怒ったような顔をして
「俺がんな簡単に手放すわけないだろっ」
一体新一を落とすのにどれだけ苦労したか。新一が離れたいとか言っても監禁してでもぜってー離さないからなっ!
と、不安に感じていた事が馬鹿馬鹿しく感じられるぐらい滔々と語られて新一はやっぱり快斗に言うんじゃなかったと後悔し始めていた。
…でも。
それでも快斗が好きで、快斗も自分を好きでいてくれて。
手放さなくてもいいと改めて思い知らされた幸せを感じながら日付が変わっても二人でバレンタインの夜を堪能していた。
***
…微妙ですけど、一応バレンタインなので…。
なんかこうもっと細かい描写とかできたらいいのにー…。新一クンの繊細な心の動きとかさー…。
何が書きたかったって”不安げな新一を後ろから快斗がそっと抱きしめる”ってのが書きたかっただけなんですよね……………ねぇ…。
まぁ、そんなこんなでハッピーバレンタイン☆
良いバレンタインを~
負の感情を押し込めてポーカーフェイスを取り繕う。
あぁ、本当に…イライラする。アイツがいるだけで俺の心の中がどす黒く変わり、あっという間に負の感情に捕らわれる。
…嫌いだ。アイツが。
恐らく誰にも向けたことのない程の感情。「嫌い」という言葉では言いきれないぐらいに…。
いっそ「憎悪」と言った方がいいのかもしれない。
それでも、俺は無理やりにでも笑顔を取り繕う。
誰にも俺の感情を悟らせない為に……。
なのに。
「お前、俺の事嫌いだろ?」
突然言われた言葉に俺は思わず目を瞠った。
「は?」
「や、だからさ…俺の事、嫌いだろ?」
目の前に座る男…黒羽快斗はなんて事のないようにへらりと笑って言った。
「俺が気づかないとでも思った?工藤」
にっこりと、それでもどこか冷たい瞳に俺の姿を見つけて思わず眉間に皺がよった。
俺がこいつ…黒羽と知り合ったのは大学に入学してすぐの事だった。
同じ大学、同じ学部、学科…ついでに顔なんか似ていれば互いに顔を合わせる機会なんていつでもあった。
『俺、黒羽快斗ってんだ。よろしくな』
誰もが好印象を持ちそうな笑顔と共に差し出された手。マジックをやるからだろうか、男にしては綺麗だと思った。その手を握り返しながら俺も笑顔を見せた。
(…こいつ、苦手かも)
そんなことを考えているのを悟られないように。
きっかけは何だったのか記憶にない。ただ、気づいたら「苦手」から「嫌い」に変わっていた。
その感情に気付いた時、俺は驚いた。今まで「苦手」とする人物はいたが「嫌い」とまでいく人がいなかったからだ。
自分の中の感情に気付いても恐らく周りには誰にも気づかれなかった筈だ。
あくまで黒羽を「友人」として接してきたから。避けたりもしない。顔にも出さない。それなのに…。
「…なんで気づいたんだよ」
今更ポーカーフェイスを取り繕っても仕方がない。小さく溜息を吐いて黒羽を睨んだ。
黒羽はそんな俺の態度に気分を害した様子もなく、ただ肩を竦めてクスッと笑った。
「そりゃ、完璧だったぜ?工藤の演技は。でも、一つだけ欠点があったんだよ」
「………」
「完璧すぎるんだよ、お前」
完璧な笑顔に「友人」として完璧な態度。他人から見たら自然なことなのかもしれないけど、俺にとっては「不自然」にしか見えなかったんだよ。
クスクスと楽しげに笑う黒羽。まるで親友に当たり前の事を教えているような感じだ。…親友になんてなりたくもないけど。
「同族嫌悪ってヤツかな。ま、お前が俺を嫌いな理由なんて他にもありそうだけど」
「理由なんて知らねぇよ。そもそも、理由なんてあってないようなものなんだろ」
「ふぅん?犯罪には動機が必要なんじゃねぇの?名探偵」
「俺がお前を嫌いなのは別に犯罪じゃねぇだろ」
ふっと鼻で笑うと黒羽は拗ねたようにそっぽ向いた。
「別に俺はお前の事嫌いじゃないのにな」
「へぇ?」
意外かもしれない。俺の感情にも気づいていて、恐らくそれがどれ程のものなのかも。それでも「嫌いじゃない」?
「むしろ好きだぜ?新一」
「気持ち悪い」
「うわ!ひでぇ…」
本気で傷ついたように落ち込む黒羽に若干の罪悪感がないわけでもない。でも、やはり自分の中ではこいつの事が嫌いという感情の方が強い。
「んじゃ、酷いついでにもうお前とは関わらないよ。つか、関わりたくねぇ」
「いきなり正直になりやがって…でも、その案は却下な」
「なんでだよ」
不機嫌さを隠さず俺は黒羽をきつく睨みつけた。その視線すら黒羽はあっさりとかわしてみせた。本当、ムカつく奴。
「俺はお前が俺を嫌いでも全然構わないぜ」
「……お前マゾ?」
「まさか。どっちかってーとSだと思うぜ?俺を嫌いだとか言う工藤を苛めて泣かせてみたいし」
「…やっぱお前嫌いだ」
なんとなく、本能で今の言葉は冗談ではないような気がして思いっきりひいた。あーもう、なんでもいいから早くここから抜け出したい。黒羽が視界に入らないところへ行きたい。
「工藤って『苦手』なヤツはいても『嫌い』なヤツは少ない…ってか俺だけだろ?」
「………」
図星だ。
「それってよーするに、俺だけに他の誰にも持ってない特別な感情持ってるってことだよな」
「……はぁ?」
「そりゃ、好いてくれた方が嬉しいけど、俺としては『工藤の特別』って方が魅力的に見えるんでね。だからお前が嫌だっつっても付き纏わせてもらうぜ?新一」
開いた口が塞がらない。というのはこういう状況を言うのだろうか。不敵な笑みと共に言われた言葉を反芻して、理解して、俺はガタっと席を立った。
「お前なんか…お前なんか…大っ嫌いだッ!」
思い付く限りの罵詈雑言を浴びせ、踵を返して足早にその場を立ち去った。
「ほんと、からかい甲斐あるよなー…でもやっぱり、作り物の態度より、あっちの方がずっといいな」
これからが楽しみだ。
残された黒羽がそう楽し気に笑っていることなんて知らないまま、俺は自分の感情を再び再確認した。
――やっぱり俺はあいつが嫌いだ。
***
久し振りに書いてこれはどうよ。と思わなくもないけど…。
快斗をもの凄く嫌ってる新一クンが書きたかったのです。そしたら気づけば快斗がSキャラに…。
でも書いてるこっちとしては楽しかったです。…って快新サイトとしてこれはNGだったりします?